夫婦喧嘩に登場する母の大切な指輪

子どもの頃からよく目にしていた両親の口げんか。

夫婦喧嘩と言うよりも、母が父の行動について一方的に怒っている事の方が多かったような気がします。
もう離婚だ!なんて言葉もよく耳にしており、その度に子供心にドキドキしていました。
でも、それが母の口癖であることもだんだんと分かり、その後また離婚だなんだと始まっても、簡単に耳を通り抜けて行くようになりました。
事実、結婚してかれこれ45年くらいになる両親は未だに夫婦をやっています。
あまりお洒落に興味の無さそうな私の母。
興味が無いと言うよりも、買うお金のゆとりが無かったと言う方が正しいのかもしれません。
記憶にある母の姿は、何時も質素で地味でした。
そんな母ですが、父から結婚する時にもらった指輪は本当に大切にしていました。
この指輪を着けて、出かけて行くところを一度も見たことが無いのですが、深い紫色の小さな箱の中に大切にしまっていたことは知っています。
でも、夫婦喧嘩中に数回これが登場して、売るとか売らないとかの話しになったこともあります。
いざとなったらこれを売ってお金にする。
きっとある程度のお金にはなるだろう。
母は、本当に頭に来た時にそう言って、箱から指輪を取り出し眺めていました。
結局この指輪は、父の悪態にも貧乏にも負けることなく、今でも母の宝箱の中にそっと保管されています。
女性にとって、男性から指輪をもらうことは特別なことのように思います。
婚約や結婚に関係なくても、特別高価なものでなくても凄く嬉しくなるのです。
指輪とは、本当に不思議なアイテムですね。

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